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コーポレート・ガヴァナンス原則
−新しい日本型企業統治を考える−
最終報告


はじめに
■昨年10月30日に本委員会が「コーポレート・ガヴァナンス原則−中間報告−」を公表してわずかに7ケ月しか経っていませんが,市場環境はわれわれの予想を越えて大きく進行しています。日本の市場では,昨年末の山一証券や北海道拓殖銀行の倒産や,外国為替管理法の改正と日本版ビッグバンの始動等があげられます。
 翻って海外の企業統治動向を眺めると,この4月,パリに本部のあるOECDは「コーポレート・ガヴァナンス−競争力を強化し,世界市場の資本に接近する」という報告書をまとめ,イギリスのハンペル委員会は3月に「最終報告」を公表,アメリカ最大の年金基金の一つCalPERSは,3月に「日本向けコーポレート・ガヴァナンス原則」を公表しました。その中でCalPERSは,日本企業が守るべきベンチマークとして本委員会の「中間報告」を採用しています。本委員会は,本年7月にサンフランシスコで開催される世界の機関株主の集まりであるICGN(International Corporate Governance Network)の総会で本原則を発表する予定です。

■本原則策定委員会の母体である<日本コーポレート・ガヴァナンス・フォーラム>についてご説明しておきたいと存じます。
 1994年の初め頃,現在のようにはコーポレート・ガヴァナンスに関する議論が高まっていなかった時に,日本興業銀行相談役中村金夫氏が,経済同友会のメンバーであるウシオ電機会長牛尾治朗氏,日本生命社長伊藤助成氏,新日本製鐵社長今井敬氏,富士ゼロックス会長小林陽太郎氏,日本アイ・ビー・エム会長椎名武雄氏,セゾンコーポレーション会長堤清二氏,東京電力会長那須翔氏,日産自動車副社長塙義一氏,オリックス社長宮内義彦氏,秩父セメント会長諸井虔氏,日本火災海上保険相談役品川正治氏,私(肩書きは当時)に呼びかけて,浦安市の東京ベイヒルトンホテルに週末一泊してコーポレート・ガヴァナンスについての討議,意見交換を夜を徹して行いました。
 その後94年中頃に,エピファニー矢内裕幸氏,朝日新聞荻野博司氏からコーポレート・ガヴァナンスに関するフォーラムを結成するにあたっての理事長の人選について相談があり,即座に経済界の最適任者は中村金夫氏をおいてないことを伝え,中村氏も同意されました。経済界を代表して中村氏,学界を代表して早稲田大学総長奥島氏が共同理事長に就任され,正式に<日本コーポレート・ガヴァナンス・フォーラム>が発足したのは94年11月のことです。
 96年12月,本フォーラムは「日本型コーポレート・ガヴァナンス原則」を策定,提言することを決定し,<コーポレート・ガヴァナンス原則策定委員会>を発足させることとなり,両理事長より私が委員長の指名を受け,フォーラム会員を中心に,企業経営者,機関投資家,法律・経済の研究者,マスコミ人や弁護士など各界から17名の参加を得て組織されました。

■本委員会は,97年1月より98年4月まで22回の会議を重ね,ここに「最終報告」を上梓することになりました。昨年10月30日の「中間報告」発表後,12回の委員会を開催,中間報告に関する国内外の各界へヒアリングを実施して,貴重なご意見やご批判を頂きました。
 本原則の特徴は,二段階方式を採用したことにあります。 実施には法律の改正を必要とするものもありますが,可及的速やかに実施すべき【原則A】と,21世紀の早い段階での実現をめざしつつ,世界の市場環境に照らしながら修正を加える必要のあるもの,乃至大きな法律改正を要する【原則B】です。
 本原則は,企業経営者と取締役会を企業統治の主体として位置づけ,みずからを律する「16条の規範」として立案しました。私たちは本委員会の一員として,ここに公表する内容をみずから率先して実行に移していく所存です。
 本委員会は,言うまでもなく,本原則の策定と発表をもって活動の終わりとするのではなく,ここに提言した内容の実施状況を確認しつつ,定期的に再検討することによって,本原則をより良いCode of Best Practices(最善の企業行動指針)にしていくとともに,本提言の実効性を追求し担保する具体的な活動に着手することによって,みずからの責務を果たしていくつもりです。それは,提言の中核になっている,独立した社外取締役制度をわが国において確立していくことにほかなりません。「独立取締役市場」の創設や「経営者市場」の流動化の推進を図り,また,本原則の上場基準化のためにも努力していく所存です。
 株主,企業経営者,監査役,市場関係者,研究者,報道機関,規制当局,海外の関連諸団体等の関係各位のご支援とご協力を切にお願いする次第です。

1998年5月26日
日本コーポレート・ガヴァナンス・フォーラム
コーポレート・ガヴァナンス原則策定委員会
委員長 鈴木忠雄


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